「鵜飼町666──水田ふう・向井孝の書棚」は水田ふう・向井孝が遺した、ふたりの手になる印刷物と、未知の仲間との接点をつくることを目的として開設されました。 第一弾として、ウリ-ジャパン機関紙「非暴力直接行動」全号を掲載します。 以降、第二弾、第三弾として、水田ふう個人通信「風」、向井孝個人通信「IOM」の掲載予定しています。  毎月6日に更新します

非暴力直接行動 184号

  • 特集 ソ連の無血解体と社会主義(革命)の行方アナボルの哀しみ
  1. モスクワのロック

●さっきテレビに写ってたんやけど、モスクワの街頭で10代の若者がギターを弾いてロックをうたってるんや ♪ゴルバチョフは間抜けな野郎 破壊(こわ)してしまえ! 破壊してしまえ! 手当たりしだい なんでもかんでも 破壊してしまえ! ぼくらはアナキストになりたいんだ アナーキー! アナーキー! イェイ イェイ なんていう文句やねん。どう思う

▲うーん。むずかしいことやなァ 眼の前でナマでやってたら、ぼくは多分じっと見てられんで、こっそり逃げ出すやろな。

●へエー。おいちゃんやったら、おぅやってる!やってる!という感じと違うの?

▲それがなんとも微妙なとこや。長年少数派というより、いつも孤立してきたオールドアナの心情としては「ヨーシ」と、声をかけたいようなものが、心のなかにたしかにあるんやけど、同時に違和感みたいなものがあって、その方がぼくの本音に近い。

●わたしは違和感が先立つ。なんかヤダ。「エリツィンくたばれ 独立国家共同体くそくらえ」とでもいえばまだええけど、いま落ち目のゴルバチョフに追い討ちかけるのは、わたしのシュミに合わん。

▲ちょっとキビしいな。けど、テレビニュースに出るいうことは、それが先端風俗として見世物化しているいうことでもあるやろし、そのエライ過激な口調も、まぁその程度のみせかけの毒というわけやろな。

●しかし「なんでもかんでも破壊してしまえ」いうのは「アナキズム」の主張する本質的なもののもっとも直截な表現やろ

▲まあ そういえばその通りや。「権力や体制支配の…」をつけ加えたら、全くその通りやとぼくも思うで。けど、ぼくなんか、なかなかあっさりとはよういわん。

●なんで?

▲そこがぼくのアナキズムの中途半端性かもしれへんのやけど、そんな簡単にいうてしまえることに、まず用心というか尻込みしてしまう。もっと正直にいうたら、うさんくささを感じてしまう。

●するとやっぱり否定的?

▲とんでもない。ぼくの心情からすると、ことアナに関したら「風俗」でも「ファッション」でも「プチブル的」でも、やたらアナーキーと云いまわるのも、すべて結構というところがあって、そんなのアカンという気はぜんぜんない。けど、それらをアナキズムの前駆やとか胎動といった風の希望的観測に短絡することはしとうない。

●ほんまに微妙な感じがあるねんな。するとソ連邦の解体いうのは?

▲うん。アナキストロシア革命でいっしょに闘ったけど、革命成立後のボルシェビキの独裁に対しては最大の反対者として、徹底的な弾圧を受けて、無名のどれだけたくさんのアナキストがロシアだけでなく東欧諸国までふくめて殺されたかしれへん。その一方、ソ連共産主義国家の成立という事実と力を背景にしてアナキズムは政治的には全くその影響力を失って今日に至ったと云えるやろ。つまりアナキズムにとって二つの敵?の一つが「とつぜん」力を失ってしもたといいうことになるんやけど・・・しかし・・・