「鵜飼町666──水田ふう・向井孝の書棚」は水田ふう・向井孝が遺した、ふたりの手になる印刷物と、未知の仲間との接点をつくることを目的として開設されました。 第一弾として、ウリ-ジャパン機関紙「非暴力直接行動」全号を掲載します。 以降、第二弾、第三弾として、水田ふう個人通信「風」、向井孝個人通信「IOM」の掲載予定しています。  毎月6日に更新します

IOM 131号

  • 続・ここ数日のメモから
  • 自連は、なにをやってきたのか(IOM130号の続き)

T君から「討論資料作成に協力してほしい。テーマ<生きる>アンド<あなたの眼にうつった××誌(T君らが出してる)は何であったか>〆切七月十五日十五枚以内。……もし書いてくれない時は「向井はひでえ偽善者だ。あんな奴ぶっ殺しちまえ」と日本中云いふらしてやるからな」と手紙もらったが。いつのまにか十五日もすぎてしまった。たしかにぼくは偽善者で、日頃かっこだけエエようにしてるのを内心みとめざるをえない。どう云われようと甘んじてうける(こうかくのもいやらしい)。ついでにあちこちへ出すべき返事を出さずにそのまま、次第に見送り忘れている無礼の数をおもいうかべて、自分がほとほとイヤになっている。

 

  • 続・ここ数日のメモから

 ○ むかし三島の野戦重砲兵の連隊に、召集ではじめて入隊したとき、<戦友>という組み合せがあるのを知った。

◎ ぼくの相手の戦友は、地方で馬力ひきをやってたという労働者。転戦八年にもなる古年兵なのに酒ぐせわるいため万年上等兵。あのゴボー剣で戦う<短刀術>の名手とかで師団対抗競技にでて優勝迄いったことがある。一たんあばれだすと上官連中もピリピリしていた。大いに初年兵をしごいたりしたが、戦友となったぼくには人間味のあるやさしいあたたかさでとりあつかってくれた。手紙の代筆をしてやったりすると、炊事場へ出かけていって、ぜんざいなどをまきあげ、ぼくにくえと命令するように云った。ぼくは彼を大事におもい二等兵の戦友として、下男のように彼の世話をすすんでした。くたくたになっていても、それが当り前でイヤな気がしなかった。おれが責任をとる、ついてこい、と消灯ラッパ後、服をきゲートルをまき、水筒をいくつもかけて脱柵し、一しょに町へ酒を買い(ついでにのんで)にいったこともしばしばだった。今でもふと思い出す。

 戦友がいつもこんなによい相手とはかぎらないが、いまおもうと軍隊組織のなかのこの<戦友>の制度は、ぼくの救いであり、周囲すべてが敵のような中での、ただひとりの頼れる仲間であった。 それはたとえば<家>のような役割を果していた。戦友はぼくに人と組むことの意味を教えた。

 

 ○ 社会福祉施設は、施設としてでなく、職員・関係者をふくめて、一個の<生活共同体>でなければならない。

 それが慈善事業であるか否かは、<関係の革命>をとおして、<存在の革命>としての生活共同体となりえているかどうか、にある。その時施設は自分のためにある。

 

 ○ 超智先生とこへいったことはないのですが、いったことがあるのです。 中学の先生やったのに、大学の先生になっていて、大きい本棚がならんでいるむこうで料理をしていて、わたしに夕食をたべさせるつもりらしい。

 私は、一ぱいの本棚の中でまよってしまい、何とかベーリーさんという名前になると、本を立ち読みするふりで、しきりに出口をさがしています。一体どうしよう。

 すると本の物語の中から、ようやくさくらさんが出てきて、おまちどおさまといい、私はさくらさんのあとについて、つれていってもらうのです。と急にまよなかになって……

 本棚の間の通路をなんどもまがっていったその部屋は、すすけた褐色の板ばりの壁がそのまま上へとのびて、うすぐらくけむった闇の天井となっていて、行きどまりの、ふりかえると今きた戸口もみあたらない密室。淡い豆ランプのようなあかりがまん中の机の上にひとつ。ふとよこをみると、そばの壁にしみのように右半身をぺったりくっつけ曲げた膝をかかえた男の横顔がじっと宙をみています。長い髪の毛で顔半分をかくした女が、壁にもたれて、眼をつぶっていて……テーブルの上に伸ばした長いうで。指の間にはさまったタバコの、灰が落ちそうになってもえてます。みまわせば壁一めんに、かげのように人たちがよりそっていて、教会でもないのに、みんなお祈りしているようなのです。一体、何のおいのり……。私は明るく大声で叫びました。みなさん、エート、こんにちは。私、アメリカからきたベーリーさんです。すると部屋中の人たちがみんな死体となってばたばた倒れていくのです。

 超智先生、はやくスープをもってきて下さい。

 

 ○ うち〓うちに傍点〓とそと〓そとに傍点〓。家と旅。女の家と男の旅。――たしかに男は旅に出る。 だがその旅は、強いられ、かつコースをきめられた旅でしかない。国家のミニ周遊券みたいな、旅のもっとも本質的部分を欠いた、擬制の旅。

 ○ ちがうものが、ちがっていること、その部分で結びつくということは、相手が自分とちがうということを認識すること――その認識がちがうということの<理解>にまで達することによってである。

 ○ 理解は、ちがっているという部分についての理解で相手のすべてにわたってではない。

 ○ 一種の共同体流行がある。共同生活・共同作業をやるのはいい。ただその空間づくりだけが先行して、人間関係づくりが(口さきの論理としては唱えられていても)具体的にはほとんど放置されているようなのは問題だ。ぼくのことばで云えば、関係を<生活技術>としてどう共同体が具体化し、その日常に表現しえているかである。

 ○ 共同体を論ずるとき、まず第一に<性>が、つまり男と女の関係が、そこでどうかわるか、をぬきにすることはできない。その意味で、気の合った若い男だけの共同体は、それそのものとしてはカタワである。また、老人や子供のことを視野に入れていないそれも、共同体たりえない。

 

 ○ イスラエル空港での日本人ゲリラ事件は、否応なしにアラブとイスラエルの国家的対立が遠い他人事でないことをつきつけた。

 以前キブツ協会を訪ねたときK君にも話し、自連編集会議でも問題にしたことだが、ことの如何にかかわらず、しばしば今迄とりあげてきた<キブツ>は、イスラエル国家の美しい目玉商品であると共に、一方アラブへの前線基地的なものを多くふくんでいる。キブツの内容や運営、関係者の意図がどうあろうとも、それはイスラエル国家の悪を隠蔽し、それを助ける役割を果している。そのことを忘れて絶対キブツだけを論じられない。

 

  • 告知板 七月二十日

○ 雑用。例えば目録つくりとか製本とか。夏休み中の数日を手伝ってくれる有志あれば、たのみたい。三食と住保証。(時に晩酌つき)時に往復切符付き。手伝う月日をきめてしらせて下さい。返事します。

○ 八月十九・二〇・二一日ごろ、沼津(三津)山鹿文庫及び富士文献センターへいこうかと思っている。未確定。もし参加希望の方は、決まり次第ハガキでしらせますから、その旨、ハガキ下さい。

○ サルートン・火曜日の雑談会――五人~八人位いつも集まっていますが、せまい部屋であんまり暑くて仕事になりません。九月第二週まで夏休みとします。

 

  • 五百円!投資して下さい。

 あなたの住所氏名年令をかいて、送って下さい。あと一切はこちらで代行します。その五百円を受け取り次第、三菱重工の一株株券を、あなた名義で取得します。(その株券はあなたへお送りします) 免罪符的?であろうとなかろうと、ともかく一回きりのカンパのつもりでもかまいません。五百円送って下さい。 つまり、ぼくたちの姫路行動反戦一株株主運動に協力し、姫路行動の友人になって頂きたいのです。イオムの読者約三百、そのうち百人ぐらいよびかけに応えて下されば……など前に虫のよいねがいをたてましたが、もうすこしのぞみを下げて五〇人ぐらいは――と願っています。この運動の特性は、数がまず力であることです。重ねてイオムの読者の有志に、このおねがいをします。

ベトナム反戦姫路行動(向井孝)